2024年04月07日

ペイチェック フィリップ・K・ディック:著

50年代から70年代の
短編



ネタバレしています

ペイチェック.jpg



50年代の作品は
特に太平洋戦争の直後なので
内容はSFとしての未来の話だが
戦争についての生々しさが読み取れる

未来なのだが
カセットテープとか
ロボットが人型とか
モノ運搬が宇宙船的なものから落とすとか
テレビがただ進化しただけとか
当時の社会の中での
未来像なのがおもしろい

とにかくどの作品も
筆者の想像力がスゴイ!




〇 ペイチェック

作業が終了したら記憶を消された主人公が
高額報酬ではなく
訳の分からない物品の幾つかを対価として本人が希望していて
記憶のない主人公はびっくり仰天

未来を見る機械を調整する仕事だったので
事業所を出たら自分がどんな目に遭うか分かって
必需品を貰ったというお話

SFでは
こういうのが読みたい
典型的な物語



〇 ナニー

子守担当のシステムが
ナニー

他社のナニー同士で戦い合い、
壊しあい、
製造の事業所が更に強いナニーを売る
親泣かせの話

書かれた当時も現代も
そしてナニーの時代も
金儲け主義はこんなに汚いんやな



〇 ジョンの世界

不思議な力を持つジョン

穏やかな風景、人々の
ビジョンが見えている

ジョンの父が過去に飛んだときに
過去が変わってしまった

戻ったら
ジョンの見ていた
穏やかな世界が広がっていた

このときに
ジョンが消滅してるのが切ない話



〇 たそがれの朝食

朝起きたら
家ごと7年後に飛ばされていた

爆撃があって
兵士が乗りこんできて

なんでお前の家とお前たちは無事なのか

と問い詰める

爆撃が凄すぎて
時空がゆがんだらしい

この夜にまた最大級の爆撃がある

一家はソレに懸ける

戻れなかったら
死ぬしかない

巧く戻れた…ではなく
戻ってから
心配して集まってきた近所の人たちに
一家は7年後にエライ戦争があると伝えられず

戦争の傷跡の残る1954年に書かれてるのが
辛い



〇 小さな町

子供の頃から
地下室で町の模型を作り続ける主人公

妻は医師と浮気をしている

主人公不在のときに
勝手に地下室に入った妻と医師

主人公が町を再現してるのに驚く

主人公が
クビになった会社を
腹いせに別のものに変えたりなど
所々違うけれど

医師は
のめり込む主人公が
この町に取り込まれることを望み
遂に主人公が行方不明になったとき
大喜び

町に出た妻と医師は
実際にあるはずのものがなく
主人公が変えた通りになってることに大ショック

取り込まれていたのは
自分たちだった

この町では
主人公が市長

胸がすく



〇 父さんもどき

父さんが2人

本物の方が
偽物に食われた

その子はそう言っても
母さんは信じない

偽物の父さんが追っかけて来る

子どもたちだけで
偽物のもとになる
虫みたいな奴をやっつけるのがおもしろい

今なら虐待は犯罪、
社会的に炎上

書かれた1954年では
子どもは親からお仕置きを喰らうのが普通

時代を感じた



〇 傍観者

体臭や頭髪がない事や
歯の汚れた色などを嫌う人々と
それは自然な事だとする人々の争い

家族同士も争う

清潔派が勝ち、
汗腺を手術したり頭髪を生やしたり、歯を白くしない人は
迫害されることになった

主人公は
どっちでもないと終始言い、
その主張で命を落とす

極端な寓話に思えない
1955年作品



〇 自動工場

自分たちで物が作れなくなった人々の為に
自動工場が物を生産し
人々に届ける

機械の作ったものではなく
自分たちが工場で生産したい人々の話

これはちょっとよく
何がおもしろいか分からなかった感じ



〇 パーキー・パットの日々

パーキー・パットは
人形の名前で
設定は10代

物品を運んでもらっている人々が
要らんものまで運ばれて
そのまま捨て置いているのだが
そこから
人形や、その衣類、街、家等を作り
人生ゲームみたいなゲームをして
取ったり取られたりして遊んでいる

他のエリアでは
別のもっと成熟した女性の人形で遊んでいて
両エリアで対決

負けた方が
自分たちの人形とセット一式を
取られてしまう

主人公は造るのがうまく
ゲームも妻とペアを組んでいたが
2人で敵地に乗りこんでいく

大変な激戦になるが
結果は勝ち

人形を分捕ってくる

しかし、戻ったエリアの人々は
最初喜んだが
向こうの成熟人形が25歳で
結婚していて
妊娠していて
主人公夫婦も変わってしまったことを知り
そのまま夫婦を追い出してしまう

集まっていた夫婦モノのなかに
夫の方が主人公らに賛同した者がおり、
一緒に出て行く

この妻は残る

なんか、色々な事を考えさせられた



〇 待機員

大統領の待機をする人

大統領が死んでるのかな、
この人が代わりに大統領と呼ばれる

これに不満を持つ有名MCが
立候補する

やむなく待機員も立候補

なぜか突然
機能停止期間が終了のニュース

これで待機員は終了

何か企んでいるところで
物語もおしまい

選挙期間中、
有名MCが当然優位なので
どんなオチになるかと思いながら読めた



〇 時間飛行士へのささやかな贈物

何度も同じ時間をループしてるから
時間飛行士の一人が
飛行船を爆破する

この一人だけがなぜループしてることを知ってるのかが
よく分からなかった



〇 まだ人間じゃない

12歳未満は魂がないから
堕胎可能対象
 要するに殺していいってこと

親がそう判断したら
12歳未満は施設に連れて行かれる

1974年書かれた作品

12歳未満に魂がないなんて
誰が言ってる!




読了:令和6年3月22日


フィリップ・K・ディック …ウィキペディア





posted by 紫 at 05:52| 大阪 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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