2008年11月09日

津山三十人殺し 筑波昭:著

著者は、新聞記者からライターになった人です


津山三十人殺し 

日本犯罪史上空前の惨劇

筑波昭:著

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この事件は実話です

私の世代から上の年代の人達は、横溝正史氏の 八墓村 をご存じだと思います

この余りにも有名な推理小説に、津山事件をベースにした下りが出て来ます

懐中電灯を頭に二本括り付け、日本刀と猟銃を持って村民を大量虐殺する

八墓村 は練り上げられた創作物語ですが、この下りは本当にあった事だと聞いていましたので、何となく興味はもっていました

津山、とタイトルにありますのでこの地名はオープンにさせて頂きますが、彼の住んでいた村の名前は今も町として残っていると思いますので、非公開とさせて頂きます

余談ですが、彼の名前も私のエントリーではふせさせて頂きます

本書で確認してください

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村の住民大半が被害にあいました

住民というか、家単位での被害といいますか…

意外に思ったのは、実在の彼が数え22歳と若かった事でした

そして、私、勝手に通り魔的な犯行と思い込んでいましたが、彼にとっては理由のある凶行だった事にも驚きました

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昭和13年5月21日午前0時〜午前3時

短時間の凶行で、戦争やテロでもない限り、こんなに一人で殺戮をした例は類をみないとの事

何故、彼はこんな事をしたのか

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い原理で、本人のみならず当該家族まで皆殺しにしてしまう程の恨みとは、何だったのでしょうか

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第一部で、事件が淡々と記されています

まず駐在所に第一報が入るとこから始まり、現場検証の記録ですね、誰がどのような致命傷をおったか的な、その表記も当時の記録通りにかかれている感じです

又、事件後の様々な問題の記録も出て来て、興味本位なルポにおわっていないと感じました

こんな事件ですから、今でいう所のPTSDの問題

恨みが何もなかった為に誰も被害にあわなかった犯人男性の遠縁一家に対する村の人達の仕打ち

家族が全滅した一家の後始末

家族が激減した一家の農業や養蚕業の処理

猟奇的な、或いは感情的な事でなく、立体的かつ冷静な筆致で、迚も読み易いと思いました

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第二部では、生年の大正6年から事件の昭和13年まで、1歳毎の彼の様子が出て来ます

父も母も小さい頃になくなり、姉と共に祖母(おばやん)に育てられた彼

事件の時は、姉は既に嫁いでいました

そしておばやんは…

そして事件の後、彼は…

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兎に角、何処にいっても夜這い夜這い

嫁入り前でも人妻でも、兎に角、夜這い対象

村が孤立してるに近かったから、恋愛対象も限られたでしょうし、赤線青線も村には存在しないし

20歳前に女の子は結婚するから、本当の恋愛は結婚してからになってしまったのかも

彼は、頭はいいかもしれませんが、真っ直ぐ真面目な人だったのでは

彼女たちは、彼が凄く退屈で、男性として面白くないと思ったのかな

彼が本当に肺病だったのかどうかは判りませんが、真面目な彼には、死を宣告されたように感じ、自分が人生の落伍者に思えた事でしょう

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同じ名字の人達が沢山出て来ます

彼に関わる人達の下りでも、殺害の場面でも、私は一々冒頭にかかれている被害現場(村)見取図のページを捲って確認しました

見取図は、戸主の名前と、家人が一人でも被害にあっていたら、全ての家人の名前がかかれています

著者がかいたんですかね[E:sign02]

それと、殺害の詳しい所になると、被害家庭全ての家屋の平図と、被害者の名前が出ています

これも著者がかいたんですかね[E:sign02]

とれだけ凄いか、本書で確認してみてください

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銃創で死亡 24名
銃創で負傷 3名→後1名死亡
頸部切断で死亡 1名
刺創or切創で死亡 3名
銃創後の出血多量で死亡 1名

頸部切断の被害者のみ、彼が所持していた武器ではなく、被害者宅にあった斧で殺害されました

被害者は、彼が大好きだったおばやんでした

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 被害者宅、と上述しましたが、

 加害者宅、でもありました

彼は、先ずおばやんの首をはねて、凶行をスタートさせたのです

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彼の自宅の写真もでていました

勿論、事件当時の物でモノクロ写真なので、逆に凄い迫力を感じますし、重苦しい気分になりました

否、もう、実際にみてください

そして、よもやよもや…

彼の出で立ちを再現した物が写真かイラストで出て来るのは予想していましたが、彼の顔写真が出て来たのは驚きました

本書の終盤に出て来ます

冒頭に載せがちな犯人の顔をこんな所に入れたのは、恐らく著者の意図があったのでしょう

この服装で、坂を上り、獣道を移動し、猟銃をぶっ放し、日本刀を振り回し、場合によったら相手を蹴り飛ばしたり、銃の台尻でどついたり

徴兵検査は肺病でおとされましたが、何の何の、戦地でもいけたんちゃいますか[E:sign02]
と言いたくなる程の、彼の凄まじいパワー

私にはおばやんが甘やかしたようには思えません

両親がいなかったから、という事も違うと思います

現代なら、カウンセリングなど受けながら、心療内科や精神科にかかるべきだといわれる領域だったのかも…

もっと身近に、夜這いの相手や女の子を買いに行く遊び仲間でなく、本当に彼の事を心配する友達でもいれば、違った結末になったのではないかと思います

体の丈夫でない男は、農業も出来ず、戦地にもいけず、要するに人ではなく、生きる資格もないような風潮の当時、彼が将来を悲観した事は想像に難くありません

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それにしても、家に鍵をかけていないのは当時よくある事だったと思いますが、炬燵で就寝するとはどういう状態でしょうか

殺害する彼も、当時はおばやんと炬燵でねています

殺害される人達の中にも、炬燵で眠っているパターンが多数出て来ます

今の炬燵と当時の炬燵では仕様が違うのでしょうか

当時は、人が横になり易い形状だったとか

えっ、今の炬燵[E:sign02]

今、炬燵を使っていますか[E:sign02]

TVでコマーシャルしてるのもみないですね

ドラマでも、炬燵に入ってる家族を最近みないかな…?

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殺戮の場面は、本当に遣り切れなさが残ります

小さい子供まで殺されています

逃げる人や、命乞いをする人にまで、容赦はありません

どうぞ震えながらよんでください

悲鳴と血の臭いと、冷静沈着に黙々と人を殺していく彼の様が、目の前に迫ってくると思います

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posted by 紫 at 06:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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