著者は元養護学校の教諭
自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」
佐藤幹夫:著
一審判決が出た2ヶ月後の
平成17年3月に洋泉社から出版されています
💥 内容に言及しています
正直に申し上げて、私は
こんなインパクトの有る事件を全く知りませんでした
☁ 事件の概要
平成13年4月東京の浅草
レッサーパンダの着包み的な帽子を被った男性が
通りかかった短大生の女性を殺害しました
猟奇事件と思われたのですが
刺した男性が軽度の知的障害(MR)で自閉症だった事が判明
其の裁判の記録を
元養護教諭の経歴を持つフリージャーナリストの著者が
ルポしています
☁ 障害について
被害女性のお父さんは、職場にMRの人が居て
一生懸命働いている姿を見ておられます
障害を持っているから人を殺す、なんて事はないと
お父さんは言います
殺害男性は自分は障害者ではないと言い、
手帳もとっくに破棄しています
著者は養護教諭時代の教え子の発達障害児たちを
例を出して書いています
電動カンナの音が耐えられずに、木工室に入れなかった子
換気扇が好きな子は、細部まできちんと換気扇の絵を描く
食事時に一つずつの具材を確かめないと口に入れられない子
これらの状態は、
五感と言いますか、
知覚の或る部分が優れて発達している事から起こります
一定の高さ・種類の音だけが、異様に聴覚を刺激する
特定の物体や現象を、超人的細かさで視覚で捉える能力
一部の味覚が発達するが為に、具材や味付けに敏感になる
無理矢理、木工室に入れようとしたり、
換気扇だけじゃなく、他の絵も描けるだろうと
課題を与えすぎたり、
食事の好き嫌いをするな、と怒ってしまったり
此の辺り、発達障害を持つ人と
其れを理解していない周囲との悲劇が有るのです
☁ 男性の妹の事
彼の妹の人生は更に悲惨です
お母さんが亡くなってからは、
お父さんのお金の管理の杜撰さから
家計は大変な事になります
お父さん自身、後からMRと分かり、手帳を取ります
家計管理と家事と仕事を
10代の頃から熟していかなければならなかった妹
此れまでにも放浪して軽犯罪を起こす殺害男性に
何回もお金を送ったりもしています
そして妹は重い病気に罹り、手術、身体障害受障
MR自閉の彼の裁判の支援をする障害者支援機関は
途中で支援の矛先を妹に向けていきます
「楽しかった事など一度も無かった」
と言う台詞が、25歳になった妹から出る
結局、本書が出る時には彼女は亡くなっています
発達障害だけでは、手帳は出ません
MRの療育手帳や、精神障害者(MD)の手帳を持っている人が、
併せて認定を受けるケースも多いようですね
私はハローワークに勤務していますが、障害者の担当ですので、
発達障害のみで、手帳を持っていない人も
私の窓口は利用して頂けるのですが、
手帳無しだと各行政の支援にも限界が有るようで
自治体や都道府県では
療育手帳やMDの手帳を取得する手続きを勧めたりしているようです
発達障害は、国を挙げての支援対象ですので、
これからもっともっと整備されていくと思います
発達障害だから、無罪
そんな事は有りません
殺害された女性が、どれほど怖い思いをして亡くなったか、
ご両親がどれほど苦しまれているかを考えれば
無期懲役で妥当なのでしょう
ですが、彼に健常者と同じ罰を与えても
意味が無いのではないかと思うのです
じゃあ、どんな刑罰を科せばいいのか、と問われても
私には分かりませんが
少なくとも、
彼なりの理由が有って、女性を包丁で数回に渡って刺したのですから
判決を急ぐのでなく
色々な人の手を借りて、もっと彼の心の在り方などをを裸にして
最も相応しい罰を求めるべきだったのではないかなと思います