2006年11月05日

グリーン・マイル スティーヴン・キング:著

グリーン・マイル

 
スティーヴン・キング:著

本国では毎月1冊ずつ出て、半年で完結する形式でした

著者は、日本での出版も同様の方法を希望し、6ヶ月に渡って1冊ずつ刊行されたようです

原題はThe Green Mile

電気椅子の処刑室への床が、リノリウムの緑色だそうで、転じて処刑への道のりをグリーン・マイルと呼んだという処からつけられたtitleと思います

 

 

 

グリーン・マイル ネタばれ中

 

 

 

 

 

1 ふたりの少女の死
 Two Dead Girls


ポール・エッジコムの1932年の出来事を回想
…と言う形式です

アメリカ南部の刑務所コールド・マウンテンで、看守の主任だったポール

8歳の双子の女児をレイプ・殺害した廉で死刑判決を受けたジョン・コーフィが、コールド・マウンテンに遣って来ます

此処にも著者の前書き

この人の前書きは、
どこまでも真面目で
どこまでも怖くて
そして
どこまでも笑わせてくれます

この前書きに、連続6冊の本著を暗黒の塔seriesに準える処が出てきます

暗黒の塔fanが
 早く続刊を出さないと
 熊の命は無いぞ 
と、縫いぐるみを縛った写真を送ってきたepisodeなど、作家としての大変さと、読者をじらす快感を巧く盛り込んでいて、流石です

さて、双子の父クラウスが、犯人コーフィを発見した時、クラウスを引き剥がすのに、大の男4人を必要とした、という下りは、涙が零れました

残忍な殺され方をした子供達の事を思うと、親としてはこうなって当然

ところで、後にMr.ジングルズと名付けられる鼠は、この時はまだ看守達の間で
スチームボート・ウィリー
…と呼ばれていますが、この名前は、ミッキー・マウスの当時の呼び名だったそうです

 

 

 

 

 

グリーン・マイル ネタばれ中

 

 

 

 

 

 

2 死刑囚と鼠
 The mouse on the Mile


スチームボート・ウィリー
又の名をMr.ジングルズ

記憶したり芸の出来る、知性的な鼠

飼い主になったのは、放火して6人の命を奪った死刑囚ドラクロア

この囚人は、偉いさんのコネで入職した看守の中でも嫌な奴、パーシー・ウエットモアに、目の敵にされます

ポールの表現では、パーシーと一緒に働くのは、後ろに立った人が、シンバル叩き捲ってる中、爆弾の信管を外す作業をするようなものだそうで

さて、模範囚のトゥート=トゥート

この2巻では、彼は死刑囚役で予行演習に参加する下りが出てきます

一々
 おいらは通路を歩いてる
 おいらは祈ってる
とか、ト書きをいうんです

通称・首長の、死刑の稽古の時、看守の一人、ブルータス・ハウエルが
 何か言う事はないか
と決まり文句を言うと、面白い事を言い返して、全看守達が笑いを堪えられない処など、読んでいて笑ってしまいました

因みにポールは何とか耐えましたよ、
偉い

ところで、いざ死刑囚を連れて行く時、無意識に鉄格子を握ってる囚人がいたりすると、指を引き剥がす時に、骨が折れる音がするとか

この物語には、電気椅子に座るまでの抵抗がいかに凄いのか、死刑囚自身も無意識な、その力が時々描かれていて興味深いですねえ

ドラクロアが、Mr.ジングルズが何か芸当する度
 見てくれ
と、一々看守達を呼び出す様、可愛いらしいんですよ

看守達も、時にはそんなドラクロアが鬱陶しい時もあり、其処も日常的にrealですね

 

 

 

 

 

グリーン・マイル ネタばれ中

 

 

 

 

 


3 コーフィの手
 Coffey's Hands


妊婦等四人を殺害した兇悪な死刑囚ウォートンが、コールド・マウンテンに遣って来ました

いよいよこの巻では、コーフィの不思議な力も出てきます

その力で体調不良を治して貰ったポールは、双子を殺したのが本当にコーフィかどうか、調べに行きます

バート・サマースミス記者

彼は、コーフィの捜索にも立ち会い、記事にしました

コーフィが犯人ではないとポールが思っている事を見抜き、自分の愛息ケイレブの話をします

普段は絶対何をされても噛みつかない飼い犬が、理由もなく、突然ケイレブに噛みついたのです

ケイレブは、片目が見えなくなり、顔の形も明らかにいがんでいます

ケイレブは、前に顔を出しただけ

いつも噛まない犬

コーフィの事も、そのように言います

子供がいて、犬を飼っているなら、気を付けないといけないのかなあと、少し怖くなった一説でした

さて、この巻では、死刑執行の手順も何度も稽古する下りが出て来ます

拘束衣の着付けも、danceの振り付けのように、何度も稽古していますが、それが功を奏する場面があります

ブルータスとポールが、ウォートンに着せていく処です

本当に、読んでいて胸の空く思いがしました

ところで、ドラクロアの死刑の稽古の時は、本人に分からせない為、お偉いさんが鼠showを見にきたから、見せに行け
と捌けさせました

ディーン・スタントン看守
自分たちは見に行けないが
 死刑の稽古だもん
連中をびっくりさせてやれ
…と発破を掛けたら、ドラクロアが笑みを

その笑みを見て、彼がどんな事をして此処に来て死刑に処されるのか分かっているポールですら、胸が張り裂けそうになると言う下り、読んでいる方も、胸が痛みました

 

 

 

 

 

グリーン・マイル ネタばれ中

 

 

 

 

 

4 ドラクロアの悲惨な死
The Bad Death
  of Eduard Delacroix




ドラクロアを気に入らない、看守パーシー

態と手順を間違えて電気椅子を作動させ、ドラクロアは、残酷で悲惨な死に方をします

此の6冊の中でも、最もキングらしい部分です

処刑の際は、電気の通りを良くして、直ぐ死を迎える事が出来るように、海面を濡らして、頭の部分に仕込むのですが、パーシーは其れをせぬ訳で、水が顔面に滴る筈が、滴らなかった訳で、其の意味をポールが気付く辺りから、読んでて、心臓がどきどき…

パーシーが、ドラクロアに酷い事をするのは、此の巻のtitleからも分かっていたけれど、実際は何をするのか、と思うと、ホントに心臓がどきどき…

さて、悲惨ながらも、笑ってしまう場面も有ります

刑務所長不在で、ドラクロア処刑の責任代理カーティス・アンダースン

彼が怒ります

ドラクロアの悲惨な死の事を、暴れん坊ウォートンが、楽しそうに歌うんですが、其れを何とかしろと言う訳です

全編通してhumourの塊であるブルータスが返す言葉
彼奴は、音痴なんではないんですか
…と言う質問に、其の場の全員が笑って、悲惨な雰囲気が和む処、読んでる方も、笑いそうになりました

目の前で仕事が失敗、その仕事は電気椅子の処刑

パーシーの怨恨による故意の手違いで、絶叫し、生きたまま焼かれた死刑囚

看守達の精神状態も最悪な中での、ぼけぼけブルータスの質問

こんな中で、ウォートンが音痴だろうとなかろうと、どうでもいいの

 

 

 

 

 

グリーン・マイル ネタばれ中

 

 

 

 

 

 

5 夜の果てへの旅
  Night Journey


此の巻から、老いたポールに秘密がある事が、ぼちぼち分かります

嫌な老人ホーム職員のブラッド・ドーランが、秘密を何とか見付けようと、ポールをつけたり、先回りしたりするのですが、老いてやもめになったポールの、愛しき女性エレイン・コネリーが、火災報知器を鳴らして騒ぎを起こし、ドーランの目を逸らして、助けます

ポールは、エレインと組んだら、半ダースのドーランに、更に半ダースのパーシー・ウエットモアを付けても、互角に戦えるなあ、なんて考えています

ドーランとパーシーは、ポールにとっては余程の例えなんですね

さて、ドラクロアの処刑は、表向き過失と言う事になり、当然、失敗した張本人のパーシーは、責任を取って退職させられる感じ

病院に転職する事になったらしく、精神病入院患者介護の手引き
…という本を読んでいるパーシーの描写があります

1932年でっせ、
日本で言うたら、昭和7年位でっせ

この頃から、米国では精神病患者を介護するという観念があり、その手引き本まで市販されている訳です

日本では考えられません

日本では、未だに心の病の人達に対しての間違った偏見すら残っていますから…

 

 

 

 

 

グリーン・マイル ネタばれ中

 

 

 

 

 

6 闇の彼方へ
  Coffey On The Mile


いよいよ最終巻

コーフィーは、病気の元を吸い取るだけでなく、体に蓄えて、再び吐き出す能力もあったんですね

コーフィーは、パーシーに、先ず変な物を注ぎ込みました

その変な物のせいか、パーシーは、熟睡しているウォートンを射殺するという愚挙に出ます

パーシーはドラクロアを

ウォートンは二人の少女を

残酷な殺し方で命を奪った

コーフィーは、二人を許せなかったんでしょう

パーシーの、ウォートン射殺なんて、世界中の読者の誰が一体、想像したでしょう

さて、双子を殺害したのはコーフィではない事が、看守達にも私達読者にも分かります

ポールの妻ジャニスが、コーフィを助けられない、即ち、死刑を回避出来ない夫とその同僚の看守達に、切れまくる場面

それを看守達が、言うべき言葉も見当たらず、ひっくり返った物を片して、そして、ジャニスは一人、ポーチでエプロンに顔を埋めて嗚咽する

この場面は、何とも言えない暗澹たる気分になりました

コーフィは又、人にその力を与える事が出来るようで、ポールが貰ってしまいます

力を持て余したポールが、車を飛ばしまくる所は、壮絶な描写です

そして、いよいよ、コーフィの死刑執行

コーフィは、処刑の時被せられるmaskをしないで欲しいと
頼みます

無事に仕事が済み、帰宅したポールは、自宅の裏の階段を上がる時、コーフィが以前、暗闇が怖いと言っていた事や、コーフィが、初めて刑務所に来た時、夜も照明を点けた侭にしているのか、と聞いた事を思い出します

仕事を終えてから家に着く迄は何ともなかったポールが、階段にへたり込んで泣くのです

コーフィの為、と言うか、私(ポール)達全てを思って泣く
という下りには、
読んでる電車の中で、私も泣きそうになりました

その後、何年も何年も経って、ジャニスが事故で死ぬ時、ポールは、抱き締めて叫ぶんです

誰か助けてくれ、と

セカチュー読んだ事無いのですが、こういう場面があったように思います

セカチューと違う筈なのは、命を助ける事が出来る故ジョン・コーフィを呼ぶ事でしょう

ムーア所長の妻メリンダを助けたじゃないか、
Mr.・ジングルズを助けたじゃないか、
ジャニスを助けてくれ

でも、コーフィは死にました

無実の罪で、死刑になりました

幾ら叫んでも、助けてくれません

そしてポールは、この手記を書いている今は、104歳

コーフィの力のお陰で、なかなか死ねません

それまで、
ポール幾つよ!
という違和感を伴っていた疑問が、最終巻で明らかになります

そして、構成が素晴らしいと思ったのは、エレインにMr.ジングルズを見せてやった、
その直後に鼠が死んだ、
そして3ヶ月後に、エレインが死んだ、
としながら、此処で終わらず
時間を遡らせて、ジャニスの死んだアラバマに思いを飛ばして、
終幕
…という遣り方でした

流石は、スティーヴン・キング

血気にはやる若者や、父母の物語が多かった彼の作品も、老齢者の心情を描いた物が多くなりましたね

posted by 紫 at 14:45| Comment(0) | TrackBack(0) | スティーヴン・キング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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